関節リウマチとは、免疫の異常により自分自身の関節を攻撃してしまう自己免疫疾患です。手足の小さな関節から左右対称に炎症が起こり、放置すると骨や軟骨の破壊・変形に至りますが、早期に適切な治療を始めることで多くの方が寛解(症状が落ち着いた状態)を目指せます。日本では約70万〜90万人の患者さんがいると推計されています。
関節リウマチってどういう病気?
関節リウマチは、本来は体を守るために働く免疫系に異常が生じ、正常な細胞などを攻撃してしまう病気です。何らかの刺激(遺伝子・環境因子)がきっかけとなり、誤った命令により免疫細胞や滑膜内の細胞からサイトカインが放出され、炎症が持続することで関節炎を引き起こします。破骨細胞も増殖するため、結果として骨破壊を起こしてしまいます。
日本での有病率は0.6〜1.0%で、約70万〜90万人の患者さんがいると推計されています。罹患率は女性で0.4/1,000人、男性で0.2/1,000人です。
関節リウマチは遺伝するの?
関節リウマチの発症原因として、遺伝的な影響と後天的影響の両方が考えられています。よく「遺伝しますか?」と質問を受けますが、親がリウマチであっても100%子どもに遺伝することはありません。
リウマチ患者の1親等以内にリウマチ患者がいる割合は9.8%という家系調査の結果があります(首藤敏秀ら 慢性関節リウマチの家系調査1990より)。これは、親が1人リウマチでも、その子ども10人のうち9人はリウマチにならないと言い換えることもできます。
もちろん、関節リウマチのいる家族は、いない家族に比べて発症確率が高いです(約3.6倍)。遺伝性は強いですが、特定の遺伝子(HLA-DR4)を受け継ぐことはあっても、1つの遺伝子からなる典型的な遺伝病とは全く異なります。
女性というだけで発症率が高い(4〜5倍)ため、性別の遺伝子もリウマチ関連遺伝子のひとつといえます。最低30個以上のリウマチ関連遺伝子が見つかっており、これらが複雑に組み合わさって発症すると考えられています。
関節リウマチの発症原因はさまざま
関節リウマチは多因子疾患と言われています。特定の1つの要因だけでなく、さまざまな要因が複雑に絡み合って病気を引き起こします。特に出生後に発生する後天的な影響は大きいと考えられており、喫煙や歯周病が密接に関係していることはすでに発表されています。また、口腔内や腸内細菌叢の変化も注目されています。
遺伝因子とタバコ・歯周病・肥満・アスベストなどの環境因子が関わることで、よりリウマチになりやすい体質に変化すると考えられています。家族に関節リウマチの方がいる場合は特に注意し、原因となるような環境要因を避けるようにしましょう。
関節リウマチの症状
初期には、手指や手首など左右対称の小さな関節に、朝起きた時のこわばり(朝のこわばりが30分以上続くのが目安)・腫れ・痛みが出ることが多く、これが数週間以上続くのが特徴です。安静にしていても痛む・熱を持って腫れる、といった点が使いすぎによる関節痛と異なります。
病気が活動的な時期(活動期)には、関節症状だけでなく、微熱・倦怠感・体重減少・食欲低下・貧血・リンパ節の腫れといった全身症状を伴うこともあります。治療が遅れて進行すると、関節の変形や骨破壊が不可逆的に進んでしまうため、こうした症状に心当たりがある場合は早めの受診が重要です。
関節リウマチの診断基準
関節リウマチの診断には、2010年に米国リウマチ学会(ACR)と欧州リウマチ学会(EULAR)が共同で発表した「2010年分類基準」が国際的に広く使われています。これは、関節の腫れの部位・数、血液検査(RF・抗CCP抗体)、炎症反応(CRP・血沈)、症状の持続期間の4項目をスコア化し、合計6点以上で関節リウマチと診断するというものです。
| 評価項目 | スコアの目安 |
|---|---|
| 関節の腫れ・痛みの部位と数 | 大関節のみ:0点/小関節を含む:1〜5点 |
| 血清学的検査(RF・抗CCP抗体) | 陰性:0点/低値陽性:2点/高値陽性:3点 |
| 炎症反応(CRP・血沈) | 正常:0点/異常:1点 |
| 症状の持続期間 | 6週間未満:0点/6週間以上:1点 |
※合計点はあくまで診断の目安です。関節リウマチ以外の病気でも高スコアになることがあるため、専門医による総合的な鑑別が必要です。
関節リウマチと間違えやすい病気
関節が腫れて痛む病気は関節リウマチ以外にも数多くあります。自己判断せず、専門医による鑑別診断を受けることが大切です。
| 病気 | 関節リウマチとの違い |
|---|---|
| 変形性関節症 | 加齢や使いすぎによる軟骨のすり減りが原因。左右対称になりにくく、朝のこわばりも短時間(数分程度)で済むことが多い |
| 膠原病(全身性エリテマトーデス等) | 関節症状に加え、皮疹や腎障害など多臓器に症状が出やすい |
| 感染性(細菌性)関節炎 | 急激な高熱・単関節の激しい腫れで発症することが多く、緊急の治療を要する |
| 線維筋痛症 | 関節そのものより全身の広範な疼痛が主体で、血液検査の炎症反応は正常なことが多い |
関節リウマチの合併症
関節リウマチは関節だけの病気ではなく、全身の様々な臓器に影響することがあります(関節外症状)。代表的なものに、間質性肺炎(合併率20〜30%程度と報告されています)、貧血、シェーグレン症候群(口や目の乾燥)、動脈硬化のリスク増加、骨粗鬆症などが挙げられます。
特に間質性肺炎は治療薬の副作用と症状が似ることがあるため、定期的な画像検査や専門医によるフォローが重要です。
関節リウマチの治療
治療の中心は薬物療法です。診断後はまず抗リウマチ薬(特にメトトレキサート/MTX)を基本とし、炎症の強さや関節破壊の進行度に応じて、生物学的製剤やJAK阻害薬を追加・変更していきます。NSAIDsやステロイドは、痛み・炎症を速やかに抑えるための補助的な位置づけで使用します。
薬物療法に加え、関節可動域の維持や筋力低下の予防を目的としたリハビリテーション・運動療法も重要な役割を担います。すでに関節の変形が進み日常生活に大きな支障が出ている場合には、人工関節置換術などの手術療法が検討されることもあります。
どの治療を選択するかは、症状の程度・合併症の有無・年齢・妊娠の希望など、お一人おひとりの状況に応じて主治医と相談しながら決めていきます。
リウマチ治療の目標
現在の関節リウマチ治療は、「Treat to Target(目標達成に向けた治療)」という考え方が国際的な標準になっています。これは、症状が落ち着いた「寛解」、それが難しい場合でも炎症を最小限に抑えた「低疾患活動性」を目標に定め、そこに到達するまで定期的に治療内容を見直していく方法です。
疾患活動性はDAS28などの指標を用いて数値化し、目標に届いていなければ、我慢せずに薬剤の追加・変更を検討します(タイトコントロール)。また、発症からできるだけ早い時期(目安として3〜6ヶ月以内)に適切な治療を開始できるかどうかが、その後の関節破壊の進行を防げるかを大きく左右するとされています。
当院で行う検査・診察の流れ
初診では、まず問診で症状の経過(いつから・どの関節に・どのくらいの時間こわばるか等)を詳しくお伺いし、実際に関節を触診して腫れや圧痛の部位・範囲を確認します。
| 検査 | 目的 |
|---|---|
| 血液検査 | RF・抗CCP抗体・CRP・血沈などを調べ、炎症の有無や自己抗体の有無を確認します |
| 関節エコー検査 | 関節内部の炎症(滑膜炎)をリアルタイムに直接確認できます。レントゲンより早期の変化を捉えやすいのが特長です |
| レントゲン検査 | 骨の変形・破壊がどの程度進んでいるかを確認します |
| MRI検査 | 初期の骨びらんなど、レントゲンでは写らない変化を確認する際に用います |
診断後は、症状や検査結果に応じて薬物治療を開始し、治療開始後1年間は8週おき、症状が安定してからは10週おきを目安に採血を行いながら、薬の効果・副作用を確認していきます。遠方の方・通院が難しい方にはオンライン診療も併用いただけます。
日常生活での注意点
治療の効果を最大限に引き出し、寛解を長く維持するためには、通院・服薬に加えて日常生活での工夫も大切です。
関節リウマチの治療の歴史とこれから
紀元前500年にはヤナギの木の皮から得られる「サリチン」が使用されていました。1897年にアスピリンが登場し、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が使用されるようになりました。
速効性のある強力な抗炎症・免疫抑制作用をもつステロイドが使用され始めました。寝たきり状態の患者さんが一晩で歩けるほどの劇的な薬でしたが、さまざまな副作用がわかり利用が見直されました。現在は適切な使用量がわかり、補助的に使用されています。
もともと腫瘍の治療に使われていたMTXが、少量で関節・骨の破壊を抑制する効果があることから関節リウマチの第一選択薬となりました。以前の治療薬に比べ関節・骨破壊抑制が著しく改善されましたが、それでも十分ではありませんでした。
MTXおよびステロイドについて →関節リウマチの免疫細胞やサイトカイン・受容体を標的とした薬で、関節炎を速やかに抑え骨破壊の進行を抑える劇的な効果があります。現在8剤が登場しており、MTXと併用することで効果がさらに増加します。
生物学的製剤について →生物学的製剤と同等の効果が得られる飲み薬です。多くの炎症性サイトカインを生み出す細胞内の伝達経路をブロックして炎症を抑えます。免疫を抑える薬のため感染症に注意が必要です。帯状疱疹はやや起こりやすいため、本院では原則50歳以上のほぼ全員に帯状疱疹ワクチン(シングリックス)を接種しています。
JAK阻害薬について →関節リウマチの治療は、さまざまな薬剤の開発・有効性により、寛解についてはタイミングさえ外さなければ比較的容易になっています。近い将来、寛解ではなく完治を目指す遺伝子的治療が必ず出てくると信じています。
本院の治療方針は、日本リウマチ学会「関節リウマチ診療ガイドライン2020」および米国リウマチ学会(ACR)・欧州リウマチ学会(EULAR)の国際的な診療指針に準拠しています。
参考文献・出典
・日本リウマチ学会「関節リウマチ診療ガイドライン2020」
・公益財団法人日本リウマチ財団 リウマチ情報センター「関節リウマチの診断」
・日本整形外科学会「関節リウマチ」症状・病気をしらべる
・首藤敏秀ら「慢性関節リウマチの家系調査」1990年
・2010年 ACR/EULAR関節リウマチ分類基準
関節リウマチについてよくあるご質問
Q. 関節リウマチは完治しますか?
現在の医学では「完治」は難しいものの、早期に適切な治療を始めることで、症状がほぼ消失した「寛解」状態を維持できる方が大半です。近年の薬剤の進歩により、タイミングを逃さず治療を開始できれば寛解自体は比較的容易になっています。
Q. 関節リウマチかもしれないと思ったら何科を受診すればいいですか?
リウマチ科・膠原病内科、またはリウマチ専門医のいる整形外科を受診してください。血液検査(RF・抗CCP抗体・CRPなど)や関節エコー検査などにより、他の関節疾患との鑑別を含めて総合的に診断します。
Q. 関節リウマチと変形性関節症は何が違いますか?
変形性関節症は加齢や使いすぎによる軟骨のすり減りが原因で、左右対称になりにくく朝のこわばりも短時間です。一方、関節リウマチは免疫の異常が原因の自己免疫疾患で、手足の小さな関節に左右対称の炎症が起こり、30分以上続く朝のこわばりが特徴です。
Q. 関節リウマチは遺伝しますか?
親がリウマチであっても100%子どもに遺伝することはありません。家系調査では、リウマチ患者の1親等以内にリウマチ患者がいる割合は9.8%と報告されています。遺伝的な影響と環境因子(喫煙・歯周病など)が複雑に組み合わさって発症すると考えられています。
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